【読書記録】自分で名付ける/松田青子 著
概要
「スタッキング可能」で芥川賞候補となった作家・翻訳家の松田青子氏による妊娠・出産・子育てをめぐるエッセイ。
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感想
個人的には妊娠中に読んで良かったベスト本。
「母乳」「母性」などの日本における妊娠・出産・子育てをめぐる良きこととされている価値観への違和感を的確に表現していて、妊娠以降に私自身が抱えていた違和感が見事に表明されていてページをめくる度に「言ってくれてありがとう!」という気持ちになった。
特に好きなところは「妊婦様」に関する記述だ。
「妊婦様」という妊婦が優遇されることを揶揄する用語があることを妊娠してから初めて知り、私自身少し萎縮してしまったところが、著者が「妊婦様を名乗ってやる」という意気込みに勇気づけられた。
著者は「妊婦様」をめぐる問題を妊婦だけに矮小化せず、日本における「普通」のハードルの高さを問題視している。私自身健康でヘテロで親の金で大学を出てサラリーマンをしてきたある種強者として生きてきたところ、初めて妊娠してある種の弱者となり「普通」のレールから少し外れてしまいとても不安になったが、妊娠に限らず「普通」から外れることがどれだけすぐ近くにあり、自分自身が「普通」から外れた人に寛容でないことにも気付かされた。